LOGIN大財閥〈篠沢(しのざわ)グループ〉本社・篠沢商事に勤める25歳の桐島貢(きりしまみつぐ)。 彼は秋のある夜、上司の代理で出席した会社のパーティーで、会長令嬢で高校2年生の篠沢絢乃(しのざわあやの)に一目惚れ。 その三ヶ月後、会長・篠沢源一が末期ガンでこの世を去る。 葬儀の日、父の遺言により会長の後継者となった絢乃を支えるべく、秘書室へ転属する旨を彼女に伝える。 絢乃は無事、会長に就任。会長付秘書として働くことになった貢はある日、会社帰りの愛車の中で絢乃に衝動的にキスをしてしまい――!? 草食系男子の年上秘書×キュートな10代の大企業総帥による、年の差オフィスラブストーリーのヒーローサイド。
View More――もしも「運命の出会い」というものが本当にあるのだとしたら、それは僕と彼女との出会いのことを言うのかもしれない。
僕と彼女は八つも年齢が離れているし、生まれ育った家柄も違う。それでも出会い、恋に落ちたのだ。
僕の名前は
一方、彼女の名前は篠沢
こんな一見何の接点もなさそうな僕たちが出会い、恋に落ちたのは、運命といわなければ一体何だったというのだろう? ちなみにこれだけは言っておくが、断じて逆玉を狙っていたわけではない。念のため。
――人間万事
『――なぁ、貢。絢乃ちゃんってSNSやってんのか?』『いや、やってないけど』 兄がどうしてこんなことを訊くのか、僕にもだいたい分かっていた。もしも彼女がこの投稿を目にされていたら、きっと僕以上に怒りをおぼえていただろうし、それ以上に怖くてたまらなかっただろうと。『この投稿のこと、彼女には言わない方がいいよな。知ったら絢乃さん、絶対に傷付くし』『いや、絢乃ちゃんだって自分でSNSやるようになったらイヤでもこれ見ることになるだろ。でも、お前から聞いた限りじゃあの子、これくらいじゃ何とも思わないんじゃねぇ? お前が思ってるよか強いぞ、あの子』『……………………』 案外そうかもしれない、と僕は思った。動画投稿サイトに書き込まれた悪意のあるコメントだって、彼女が目にされていないはずがないのだ。でも彼女はきっと、そういう見方も世間にはあるのだと真正面から受け止められているのだろう。僕のよく知る彼女は、そういう芯の強い女性だった。『しかもこれ、向けられてる悪意はお前にだぞ? 絢乃ちゃんなら、これ見た時お前のこと守ろうとするんじゃね? なぁ、お前さ、守られてばっかでいいのかよ?』 『そりゃあ、俺だって彼女のこと守りたいよ。だからキックボクシング始めたようなもんだし。……まだ初心者だけど』『ウソつけ。お前、絢乃ちゃんとヤる時に貧相な体じゃみっともないって思ってるだけだろ!』『やかましいわっ!』 ――なんていう兄とのやり取りを思い出しながら、僕はひたすらサンドバッグに向かってハイキックの特訓をしていたのだが……。ちなみにこの頃、ローキックくらいはサマになっていた。「――うぅ……、股関節が痛い……。初心者にハイキックなんてムチャなのかな……」 練習帰りにクルマに乗り込むと、僕は激しい筋肉痛を訴えてハンドルに突っ伏した。「俺、こんなんで絢乃さんのこと守れんのかよ……」 自分の不甲斐なさに泣きたくなった。こんなんだから俺、彼女に守られてばっかりなんだよな……。 ――ただ、兄の予想はおおかた当たっていて、それどころか予想以上で。あの投稿を見た後すぐに調査事務所を頼り、投稿主が俳優の小坂リョウジだと突き止めたのだった。 僕のためならどんなことでもできてしまう彼女の行動力にはいつも感服するが、この時はそれ以上に怖くなってしまった。
映画でも観ようと入ったショッピングモールで、絢乃さんが唐突に「お手洗いに行きたい」と言いだした。「ちょっと時間かかるかもしれないけど、心配しないで待っててね。じゃあ、行ってくる!」「はぁ……、どうぞ。行ってらっしゃい」 彼女はその後手近な女性用化粧室へ駆け込み、戻って来られるまで七~八分くらいかかった。 僕が思うに、多分そこで体のムラムラを解消されていたのだろう。戻ってこられた時、スッキリした顔をされていたから。僕があんな余計な質問をしたせいで……と思うと、何だか申し訳ない。 その頃大人気だった恋愛映画のチケットを購入して二人で観た。R18指定作品だったが、絢乃さんも十八歳になっていたので何ら問題はなかった。ただ、濃厚なラブシーンが多かったので、ちょっと気まずくなったことだけは確かだ。いつか、僕も彼女とそういう行為に及ぶのかと思うと……。 絢乃さんはといえば、映画のあとにまたムラムラきたらしく、再び七~八分くらいトイレにお籠りされた。 * * * * 翌日の土曜日は、絢乃さんに会わなかった。 実はこの少し前から、僕には新たに始めたことがあったのだ。下北沢にあるキックボクシングのジムに通っていたのである。 元々は、彼女と体の関係にまで進んだ時に貧相な体つきだとちょっとみっともないから、少しでも逞しくなりたいと思って始めたことだったが(そんなにいうほど貧相でもないのだが、女性はやっぱり逞しい男の方が好きだろうと思うので)、この頃の目的は「彼女を守りたい」に変わっていた。 実はこの前日の夜、実家で兄からあるものを見せられていたのだ。それはSNSにアップされた、写真付きのある投稿だった。『――貢、ちょっとこれ見てみ? これヤバくねぇか?』 僕の部屋にやってきた兄が、難しい顔で僕に自分のスマホを突き付けてきた。 『うん、何だよ? ……ちょっ、これって』『な、ヤベぇだろ?』 僕も顔をしかめたその投稿は、豊洲で隠し撮りされたらしい僕と絢乃さんの2ショット写真が添付された誹謗中傷だった。〈篠沢グループ会長のスキャンダル発覚! 隣に写ってるのは彼氏か!? 大してイケメンでもないのに逆玉を狙った不届き者! 男のシュミ最悪!! #この男見つけたら制裁 #この男は社会のゴミ〉 …… 『何だよこれ……。めちゃめちゃ悪意あ
――翌日も、僕は絢乃さんと会うことになっていた。会社はまだ休暇中だったが、デートのついでに出張の報告書を彼女に渡すつもりでいたのだ。「――おはようございます、絢乃さん。さっそくですがこれ、神戸出張の報告書です」 彼女が僕のクルマに乗り込まれると、僕はダッシュボードに置いていた大判のクリアファイルを彼女に手渡した。「ありがと。でも、報告書くらいメールで送ってくれたらよかったのに。わざわざ持ってこなくても」「いいんです。僕が絢乃さんに会いたかったんで。報告書はあくまでもついでです」 僕がそう言って笑うと、絢乃さんも照れくさそうに「……そう」と言ってはにかまれた。……ああ、やっぱり可愛い。 でも、この日の彼女は可愛いだけでなく、何とも言えない色香をまとっているように感じた。朝シャワーを浴びられたのか、柑橘系のコロンの香りに交じってシャンプーやボディソープの香りもしていた。 ……やっぱり、僕も前日想像したとおり、彼女もひとりで自慰行為を……? この清純系の絢乃さんが?「――あの、絢乃さん。ええと……、その、……絢乃さんにもやっぱり男性に対してムラムラしたりする気持ちってあるんですか?」 勇気を振り絞って訊ねてみると、絢乃さんは「えっ!?」と声を上げた後かすかに顔をしかめられた。そして本当にかすかにだが、下半身をモゾモゾと動かしていた。 僕にも女性経験はあるので分かったのだが、これは女性の性的な反応なのだ。美咲も僕との行為の前に、同じように下半身をモゾモゾ動かしていた。ということは……。「そ、そりゃあ……わたしもオンナだからね。それなりには」 絢乃さんはモゾモゾをごまかすようにそう答えた。そのため、僕の「もしかして」は確信に変わった。「そうですよね……。じゃあ、そうなった時はどうされてるんですか? たとえば昨日とか一昨日の夜、やっぱりご自分で……その……」 さすがに自慰行為をしているのかとはっきり訊ねる勇気はなかったので、オブラートに包んだような訊ね方になってしまった。が、その時僕は見た。彼女のモゾモゾした動きが、より激しくなっていたのを。ということは、彼女の性的反応が強くなったということだろう。 動揺を隠せなかったらしい彼女に、僕はもう一度「絢乃さん?」と呼び掛けてみると、少し長い間が空いたあと「それはノーコメントで」とだ
たとえば、僕の部屋で二人横並びになってカップアイスを食べていた時。ベッドに腰掛け、わりと密着していたあのシチュエーション。彼女の髪から香ってくるシャンプーの匂いや、手を伸ばして触れたくなるような、ツルツルスベスベの白い肌。時々見せてくれるアンニュイな表情……。それだけで、僕の理性はあっという間に吹っ飛びそうになった。 そして、首元には僕がお誕生日に贈ったあのネックレス。――彼女は本当に、あれから肌身離さず身に着けて下さっているそうだ。もちろん、制服姿の時にも。それだけでも十分、彼女の僕への愛を感じられた。 それでもって、彼女にも僕との体の繋がりを求める気持ちがあったという告白だ。十八歳といえばもう法律上は立派な大人の女性で(飲酒や喫煙の話はまた別の問題だが)、お互いの意思が一致しているならあの場で関係を持っていても問題はなかったはずである。そこは〝出張〟という名目と、彼女がまだ高校生だったということを気にしすぎていた僕がカタブツすぎたせいだろう。 彼女もあの後、ご自身の部屋で僕への熱をどう処理していいか分からずに悶々としていらっしゃったのだろうか? もしかしたらベッドの中で、一人で……? あの細い指で、あんなところやこんなところを弄っては艶っぽい声を発していたり……するのか? あの絢乃さんが、人知れず一人で乱れている光景か……。何だか想像がつかない。「……お前さ、今とんでもねぇ想像してなかったか? なんか顔赤いぞ?」 兄の存在をしばし忘れ、一人でムフフ♡ なアレやコレやを想像していたら、兄にバッチリ見抜かれていた。 ただしこれは、明らかに僕にTL小説を勧めていた小川先輩のせいである。 実はあの後しばらくしてから、別の書店で思いっきり濃密なTL小説を数冊購入して、すっかりハマってしまったのだ。そのヒロインたちはしばしば、自分の熱――欲望を自分の手でかき乱していた。だから絢乃さんも……とついつい妄想を膨らませてしまったのだ。「…………別に、何でもない」「いや、オレは別に呆れてるとかそんなんじゃねぇのよ。やっぱお前もオトコだったんだなーって」「そうだよ」 絢乃さんと交わりたい、それが僕の本能に基づいた願望だった。彼女は僕の愛すべきボスで、女王さまだ。だから――、本当は、早く彼女の欲望を満たしてあげたかった。 でも彼女には僕が